大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和50年(ネ)1820号 判決 1977年3月28日

一審被告(第一、六六八号事件控訴人) 古山孝七

右訴訟代理人弁護士 林宰俊

一審被告(第一、七四八号事件控訴人、第一、八二〇号事件附帯被控訴人) 今村春吉

右訴訟代理人弁護士 樋口光善

右訴訟復代理人弁護士 高橋むつき

一審被告(第一、八一〇号事件控訴人、第一、八二〇号事件附帯被控訴人) 木村雅輔

右訴訟代理人弁護士 中野公夫

同 吉田雅子

同 藤本健子

右中野訴訟復代理人弁護士 高橋易男

一審原告(第一、六六八号事件、第一、七四八号事件及び第一、八一〇号事件各被控訴人並びに第一、八二〇号事件附帯控訴人)

破産者井出株式会社、破産者株式会社有明社及び破産者井出久各破産管財人 岡野謙四郎

主文

一  本件各控訴を棄却する。

二  附帯控訴に基づき、原判決主文第四項中、金員支払を命ずる部分を次のとおり変更する。

一審被告木村雅輔及び同今村春吉は、破産者井出久破産管財人としての一審原告に対し、昭和四六年七月三日から同年八月一〇日までは一審被告木村雅輔が、同年同月一一日から、昭和五〇年九月一一日までは一審被告木村雅輔及び同今村春吉の各自が、いずれも一か月金五万七、〇〇〇円、昭和五〇年九月一二日から原判決添付不動産目録記載(二)の(2)の建物の明渡済みに至るまでは右一審被告両名の各自が、一か月金六万二、〇〇〇円の各割合による金員を支払え。

三  各控訴費用は、それぞれ各控訴人の負担とし、附帯控訴費用は、附帯被控訴人らの連帯負担とする。

四  この判決の第二項は、仮に執行することができる。

事実

一審被告古山代理人は、「原判決中、一審被告古山に関する部分を取消す。破産者井出株式会社破産管財人としての一審原告の一審被告古山に対する請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも右一審原告の負担とする。」との判決を、一審被告今村代理人は、「原判決中、一審被告今村に関する部分を取消す。破産者井出久破産管財人としての一審原告の一審被告今村に対する請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも右一審原告の負担とする。」との判決並びに附帯控訴につき、附帯控訴棄却の判決を、一審被告木村代理人は、「原判決中、一審被告木村の敗訴部分を取消す。破産者井出株式会社、同株式会社有明社及び同井出久各破産管財人としての一審原告の一審被告木村に対する各請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも右一審原告の負担とする。」との判決並びに附帯控訴につき、「附帯控訴を棄却する。附帯控訴費用は、破産者井出久破産管財人としての一審原告の負担とする。」との判決をそれぞれ求め、一審原告は、右各控訴につき、いずれも「控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決並びに附帯控訴として「原判決主文第四項中、金員支払を命ずる部分を次のとおり変更する。一審被告木村及び同今村は、破産者井出久破産管財人としての一審原告に対し、昭和四六年七月三日から同年八月一〇日までは一審被告木村が、同年八月一一日から附帯控訴状送達の日までは一審被告木村及び同今村の各自が、いずれも一か月金五万七、〇〇〇円の割合による金員を、附帯控訴状送達の日の翌日から原判決添付不動産目録記載(二)の(2)の建物明渡済みに至るまでは右一審被告両名の各自が、一か月金六万二、〇〇〇円の割合による金員を支払え。附帯控訴費用は附帯被控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張並びに証拠関係は、次に付加するほかは、原判決の事実摘示と同じである(ただし、原判決一四枚目表一行目に「金六万円」とあるのを「金一万五、〇〇〇円」と改める。)から、これを引用する。

一  一審被告今村

一審被告今村は、昭和四七年三月三一日、横川文月より同人の井出久に対する金四〇〇万円の貸金債権とこれに対する利息及び遅延損害金債権を譲り受けるとともに、右債権を担保するため原判決添付不動産目録記載(二)の建物につき設定された抵当権、代物弁済の予約及び停止条件付賃貸借契約上の権利をも譲り受けた。

そして、右債権の譲渡通知は、横川が、一審原告に対し、昭和四九年九月三〇日付内容証明郵便をもってなし、右通知は、翌三一日、一審原告に到達している。

従って、一審被告今村は、右(二)の建物につき賃借権を有する。

二  一審被告木村

1  一審被告木村は、昭和四六年六月一五日、井出株式会社、株式会社有明社、井出久及び加藤ヨシ子に対し、右四名の連帯で、加藤との間で、加藤がその余の借主の代理人として消費貸借契約を締結したうえ、金一〇〇万円を貸与したものである。

仮に、右加藤に井出株式会社他二名を代理する権限がなかったとしても、井出久は、個人及び井出株式会社、株式会社有明社の各代表者として、昭和四六年七月三日ごろ、加藤の右無権代理行為を追認した。

なお、右貸金の利息は年一割五分、遅延損害金は金一〇〇円につき一日金八銭二厘、弁済期は昭和四六年七月五日の約であった。

次に、右債務を担保するため、昭和四六年六月一五日、井出株式会社はその所有にかかる原判決添付不動産目録記載(一)の土地、建物(以下単に(一)の土地、建物という。)を、井出久はその所有にかかる同目録記載(二)の土地、建物(以下単に(二)の土地、建物という。)をそれぞれ担保に供することを承諾して、加藤を代理人とし、一審被告木村との間で、(一)、(二)の各土地、建物につきそれぞれ根抵当権設定契約を締結するとともに、右債務の不履行を停止条件とする代物弁済契約((二)の土地、建物については代物弁済の予約)及び賃貸借契約を締結したので、一審被告木村は、右契約に基づき、原判決添付仮登記目録記載(一)及び(二)の各仮登記(以下単に(一)、(二)の仮登記という。)を経由したものである。

仮に、加藤に右の代理権がなかったとしても、井出久は、昭和四六年七月三日ごろ、個人及び井出株式会社の代表者として、加藤の右無権代理行為を追認した。

2  一審原告の後記附帯控訴理由は否認する。

三  一審原告

1  附帯控訴の理由

一審被告今村が、(二)の建物に居住し、これを占有したのは昭和四六年八月一〇日であり、そのころの右建物の一か月の賃料相当額は金五万七、〇〇〇円であり、昭和五〇年七月一日現在におけるそれは金六万二、〇〇〇円である。

そこで、破産者井出久破産管財人としての一審原告は、附帯控訴によって損害金請求部分を拡張し、一審被告木村が(二)の建物を占有した昭和四六年七月三日から一審被告今村が居住するに至った同年八月一〇日までは一審被告木村に対し、同年同月一一日から附帯控訴状送達の日までは右一審被告両名の各自に対し、それぞれ一か月金五万七、〇〇〇円の割合による賃料相当額の損害金を、附帯控訴状送達の日の翌日から(二)の建物の明渡済みに至るまでは右一審被告両名の各自に対し、一か月金六万二、〇〇〇円の割合による賃料相当額の損害金の支払を求める。

2  一審被告今村の賃借権の抗弁に対する再抗弁

(1)  横川文月は、破産者井出久に対し、昭和四六年一一月二六日、破産債権として金四〇〇万円の届出をしている。従って、横川の右債権は、破産手続内で処理されるべきであるから、(二)の建物につき賃借権を取得し得る何等の理由もなく、一審被告今村も、同人より右賃借権を譲り受けるに由ないものである。一審被告今村の主張する債権及びそれを担保するための権利の譲受行為は、総て虚偽仮装にすぎない。

(2)  仮に、そうでないとしても、横川が一審被告今村に譲渡したとする債権は、その額が金三〇七万五、〇〇〇円にすぎない。しかるに横川は、井出久弥所有の時価約一、七〇〇万円の家屋(東京都豊島区池袋本町四―二〇三番地所在木造瓦葺二階建共同住宅一棟床面積一階一一四・〇四平方メートル、二階一一五・六三平方メートル)を代物弁済によって取得しているから、右債権は消滅している。従って、一審被告今村は、横川より債権を譲り受けるに由なく、それを担保するための賃借権等も取得し得ない。

(3)  仮に、そうでないとしても、一審被告今村は、(二)の建物を不法に占拠することによって、その所有者たる井出久に対し、昭和五一年一〇月二〇日現在、合計金三五八万九、〇〇〇円に上る損害を与えている(昭和四六年八月一一日から昭和五〇年一一月一〇日までは一か月金五万七、〇〇〇円、昭和五〇年一一月一一日以降は一か月金六万二、〇〇〇円の割合により計算)。そこで、一審原告は、昭和五一年一〇月二〇日、一審被告今村に対する右金三五八万九、〇〇〇円の損害賠償債権を自働債権として、一審被告今村が譲り受けたとする金三〇七万五、〇〇〇円の債権とを対等額で相殺する。従って、一審被告今村が、右債権とともに譲り受けたとする(二)の建物についての賃借権等も消滅した。

(4)  仮に、右相殺の主張が認められないとしても、一審被告今村は、(二)の建物を無権限で占拠したものであり、かつ、昭和四九年夏ごろ、一審原告に対し、退去することを約しながら、後日、横川文月より井出久に対する債権とともに、(二)の建物についての停止条件付賃貸借契約上の権利を譲り受けたとして、同年九月三〇日付内容証明郵便をもって、その旨一審原告に通知し、その賃借権を主張するのは、右建物についての一審原告の明渡請求を妨害するためのものであることが明らかであるから、右は、不法の実態を権利の外観によって仮装しようとするものであり、権利の乱用であって許されない。

(5)  仮に、右権利乱用の主張が認められないとしても、一審被告今村は、横川文月より譲り受けた(二)の土地、建物についての抵当権の実行を申立て、東京地方裁判所昭和四九年(ケ)第六、六三〇号不動産競売事件として係属し、競売開始決定がなされた。従って、一審被告今村は、右抵当権とともに同一債権を担保するための停止条件付賃貸借契約上の権利を、右抵当権の実行とあわせて行使することはできない。

四  証拠≪省略≫

理由

一  当裁判所は、破産者井出株式会社、同井出久各破産管財人としての一審原告の一審被告木村に対する(一)及び(二)の各仮登記の抹消登記手続を求める請求は理由があるものと認める。その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決の理由と同じであるから、その当該説示部分(原判決理由欄第一項)を引用する。

1  原判決一八枚目表九行目の「そのうち」に続けて「の乙第一号証の一及び四の各約束手形」と加える。

2  一審被告木村の当審における抗弁中、井出株式会社、株式会社有明社、井出久及び加藤ヨシ子が四名連帯で、昭和四六年六月一五日、加藤がその他の者を代理して、一審被告木村より金一〇〇万円を借り受け、さらに加藤を代理人として、井出株式会社が(一)の土地、建物を、井出久が(二)の土地、建物をそれぞれ右債務の担保として提供したため、(一)及び(二)の各仮登記が経由された旨の主張については、当審における一審被告木村本人の供述には、右主張に副う部分が存するけれども、加藤が右の代理権を有していたとの点については、≪証拠省略≫に照らしとうてい措信できないし、他に右の点を認めるに足りる証拠はないから、右主張はこれを認めることはできない。

次に、井出久が個人及び井出株式会社の代表者として、加藤の右無権代理行為を追認したとの点については、≪証拠省略≫には、右の点に副うところがあるけれども、≪証拠省略≫に照らし措信できないし、他に右の点を認めるに足りる証拠はない。

従って、一審被告木村の当審における抗弁も採用できない。

二  当裁判所は破産者井出株式会社破産管財人としての一審原告の一審被告木村及び同古山に対する(一)の建物の明渡しと、昭和四六年七月三日から同年一二月末日までは一審被告木村に対し、昭和四七年一月一日以降右建物の明渡済みに至るまでは一審被告木村及び同古山の各自に対し、いずれも一か月金六万円の割合による賃料相当額の損害金の支払を求める請求、破産者井出久破産管財人としての一審原告の一審被告木村及び同今村に対する(二)の建物の明渡しと、附帯控訴によって拡張された部分を含め損害金の支払を求める部分即ち、昭和四六年七月三日から同年八月一〇日までは一審被告木村に対し、同年同月一一日から昭和五〇年九月一一日(附帯控訴状送達の日)までは一審被告木村及び同今村の各自に対し、いずれも一か月金五万七、〇〇〇円、同年同月一二日以降右建物明渡済みに至るまでは右一審被告両名の各自に対し、一か月金六万二、〇〇〇円の各割合による賃料相当額の損害金の支払を求める請求は、いずれも理由があるものと認める。その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の理由と同じであるから、その当該説示部分(原判決理由欄第二項)を引用する。

1  原判決二〇枚目裏四行目の「各証拠」の次に「弁論の全趣旨により真正に成立したことを認める甲第八号証の一、(一審被告今村との関係では成立に争いがない。)当審証人崔錦鑛、同井出喜久子の各証言、当審における一審被告木村、同今村、同古山各本人尋問の結果」を加え、同一〇行目の「前記のように」とあるのを「昭和四六年八月一〇日、」と改め、二一枚目表六行目の「また、」の次に「昭和四六年八月一〇日以降は、」と加える。

2  原判決二一枚目裏六行目の「同浦本博一」の次に「当審証人井出喜久子」と、同七行目の「被告宋本人尋問の結果」の次に「当審における一審被告木村本人尋問の結果」とそれぞれ加え、同一〇行目の「……手段として、」の次に「(一)の建物については株式会社有明社、(二)の建物については井出久がそれぞれ占有使用あるいは居住中であったのを、昭和四六年七月三日、その意に反して退去させ、自ら又はその配下をして右建物のいずれも占拠した後、」と加え、同末行の「井出久及び」を削除し、二二枚目表一行目の「……通謀のうえ」の次に「右占拠を合法化するため」と加え、同行目の「……すぎず」の「ず」から同三行目の「……されていない」の「……されてい」までの全部を削除する。

3  原判決二二枚目裏三行目の「採用することはできない。」の次に「なお、当審における一審被告今村本人の供述には、同被告が(二)の建物に入居するに先立ち、その所有者の井出久の同席した席で、同人や一審被告木村らと話合ったうえ留守番として入居するようになった旨の供述部分があるが、右供述は、≪証拠省略≫に照らしとうてい措信できない。」と加え、同行目の「また、」から同八行目までの全文を次のように改める。

「次に、一審被告今村の(二)の建物につき賃借権を取得した旨の抗弁について判断するに、≪証拠省略≫によると、井出久は、横川文月より昭和四六年六月一〇日、金四〇〇万円を借り受け、その消費貸借上の債務を担保するため、その所有にかかる(二)の土地、建物につき抵当権を設定するとともに、あわせて右各不動産について代物弁済の予約をなし、さらに右債務の不履行を停止条件とする賃貸借契約を締結し、抵当権設定登記と代物弁済の予約につき所有権移転請求権の仮登記及び停止条件付賃貸借契約につき賃借権設定の仮登記を経由したこと、しかるに横川は、一審被告今村に対し、右消費貸借上の債権とともに右抵当権、代物弁済の予約及び停止条件付賃貸借契約上の権利を譲渡し、昭和四九年七月二二日、昭和四七年三月三一日付債権譲渡を原因とする抵当権移転の附記登記及び停止条件付賃借権移転仮登記の附記登記を経由し、さらに昭和四九年八月六日、所有権移転請求権移転の附記登記を経由したこと、そして、一審被告今村は、譲渡人横川名義をもって一審原告に対し、昭和四九年九月三〇日付内容証明郵便をもって井出久に対する右債権を譲渡した旨を通知したことが認められ、右通知はそのころ、一審原告に到達したことは、一審原告の明らかに争わないところである。

しかるところ、一審被告今村は、昭和四七年三月三一日、前記消費貸借上の債権とともにそれを担保するための権利を譲り受けたので、同日以降(二)の建物につき賃借権を取得した旨主張する。

一審被告今村の右債権譲受に関し、一審原告に対する債権譲渡の通知がなされたのは、右に認定のとおり、昭和四九年九月三〇日ころであるが、≪証拠省略≫によると、一審被告今村は、右債権譲渡通知直後の昭和四九年一〇月一一日、東京地方裁判所に対し、前記譲受けにかかる抵当権の実行として(二)の土地、建物につき競売を申立てた結果、同裁判所は、同年一〇月一四日、競売手続開始決定をなし、手続は現に進行中であることが認められる。そうすると、横川は、右抵当権の設定とあわせて同一債権保全のため、右各不動産につき、代物弁済の予約と停止条件付賃貸借契約を締結したのであり、一審被告今村は、それらを譲り受け、債権清算の手段として抵当権実行の途を選択し、競売の申立をなしたのであるから、それによって競売手続が開始され、それが進行中である以上、同一審被告は、これと競合して停止条件付賃貸借契約上の権利を行使することは許されないといわねばならない。従って、この点に関する一審原告の再抗弁は理由がある。」

4  原判決二三枚目表三行目の「そして、」の次に「弁論の全趣旨により真正に成立したことを認める甲第八号証の二、」と加え、同行目の「乙第二号証の一、二」とあるのを「乙第二号証の一」と改め、同六行目の「金二万五、〇〇〇円」とあるのを「昭和四六年一〇月一日現在は金五万七、〇〇〇円、昭和五〇年七月一日現在は金六万二、〇〇〇円」と改め、同一〇行目の「……できず、」の次に「又、前記乙第二号証の二の記載のうち(二)の建物の賃料に関する部分は、甲第八号証の二に照らし低額に過ぎて採用することができず、」と加える。

5  原判決二三枚目裏九行目の「一二月末日」とあるのを「八月一〇日」と改め、同一〇行目の「昭和四七年」から二四枚目表一行目の「二万五、〇〇〇円」までの全部を、「同年八月一一日から附帯控訴状が一審被告木村及び同今村に送達された日である昭和五〇年九月一一日までは一審被告木村、同今村の各自が、いずれも一か月金五万七、〇〇〇円、右附帯控訴状の送達の日の翌日である同年九月一二日から右建物明渡済みに至るまでは右一審被告両名の各自が、一か月金六万二、〇〇〇円」と改める。

三  当裁判所は、破産者株式会社有明社破産管財人としての一審原告の一審被告木村に対する不当利得返還請求のうち、金三六二万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和四七年七月四日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払を求める部分は理由があるものと認める。その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決の理由と同じであるから、その当該説示部分(原判決理由欄第三項)を引用する。

原判決二六枚目裏六行目の「れども、」の次に「そのうち、売掛金債権回収費用金二二万二、四五八円との主張は、一審被告木村が、前記金一五〇万円以上の債権を回収するために右主張の額の費用を要したこと、及びそれが総て右債権回収と因果関係を有することを認めるに足りる証拠はなく、その余の」と加える。

四  以上によると、一審被告古山、同今村、同木村の本件各控訴は理由がないので、いずれもこれを棄却することとし、又、破産者井出久破産管財人としての一審原告の附帯控訴によって拡張された一審被告木村、同今村に対する損害金の支払を求める部分は、総て理由があるので、原判決主文第四項中、金員支払を命ずる部分を主文第二項のとおり変更することとし、控訴費用及び附帯控訴費用の負担については、民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条を、仮執行の宣言については、同法第一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡辺一雄 裁判官 田畑常彦 丹野益男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例